聖夜は独りで
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9月 16日
日記、ずいぶんサボってしまった。
というのも、主人との口論が長引いてたから。
新婚生活も1年過ぎたというのに、まだ折り合いのつかない所があるのね。
だって主人ったら、台風が来てるのに会社に行くって言うんだもの。
「警報が出てないから行かなくちゃ」って言ってたけど、小一時間引き留めたら案の定警報が出たの。なのにあの人は「警報が出てない以上、出勤しようとした自分の判断は正しい」って言ってるし。
そりゃ会社は大切だけど、自分の身をもっと気遣ってほしいわ。
生まれつき心臓の弱いあの人は、激しい運動をしただけで命に関わる体だもの。
体に爆弾を抱えたような主人を会社に送り出すの、本当に毎日辛い。本当なら縄で縛ってでも、外出してほしくない。
もちろん最愛の主人だから言うの。
私には、あの人が必要だから。
それにしても、今日もあの人は帰りが遅い。
心配だなあ。
10月 21日
この日記、いくらなんでも不定期すぎるかも。
一ヶ月以上間が空くのって、意味不明ね。
書く気になったのは、大変な事があったから。
昨日のことなのだけど、主人の同僚だと名乗る人物が家まで来て。
主人を出すように言われたのだけど、私が「主人は体の調子が優れないから会えません。それでここ数週間会社も休んでいるんです」って言ったのね。
それで引き下がるかと思ったら、すごく怖いの、その人。無理矢理私の話も聞かずに押し入ろうとしてきて。
もうこれは異常だって思って、私必死で主人を守ったわ。
何を使って何を振り回したのかよく覚えてないけど、とにかく相手は逃げ帰ったから本当に良かったと思う。
それからも会社の同僚を装った電話が相次ぐから、もう最近はすべての電話を取ってない。
もうあんな恐い思いしたくないから。
今日も主人は布団で寝込んでる。
早く元気になってほしい。
でも、毎日好きな時間に、あの人に会えるのはちょっぴり嬉しい。
でも駄目だわ、そんなこと。あの人には元気でいてほしいのだから。
毎日家にいてくれるのは嬉しいけど、それでもやっぱり、早く元気になってくれないと。
11月 4日
ああ、また日が開いてしまった。
毎日主人が家に居て、私退屈にする時間がないんだわ、きっと。
この日記を付け始めたのも、独りの時間が退屈だったからだし。
で、今日のこと。主人に会いたいっていう訪問者、また現れた。
今日は2人、両方ともこの間の人とは違う人で、この間より強そうな男2人だった。
でも先日の一件から、私玄関に防犯スプレー置いておいたの。だから思ったよりあっけなく退治できたわ。
恐い世の中になったものだと思う。もうこれから誰かが玄関に来てもうかつに出ないことにする。
お買い物、どうしようかしら。家を空けると主人を守れないから、通販にしてみよう。
12月 20日
どうしよう けいさつみたいな格好をした2人組が部屋の前にいすわってるの やだやだやだ 最初はうるさかったけど、いまもしずかで包丁でおどしたらずっといて やだやだやだ ああ何かいってる もう 扉があいてもう
12月 24日
今日はクリスマス。
主人は出かけてしまってもう居ないけど。
だから私、あの人が帰ってくるまで待ち続けることにする。
部屋の様子は変わってしまったけれど、きっとあの人は帰ってきてきてくれるから。
まさかあの人が死んでいたなんて、そんなはずないんだから。あの人を守れるのは、私だけなのだから。
END
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